2019年2月28日木曜日


カワサキメグロSG

隼とカワサキメグロSG  2013

  ついにSGを手放す時が来た。大学4年生の時に手に入れた時、すごく嬉しかった記憶がある。その理由はそれまで乗ってたバイクは70年代生まれだったが、初めての60年代のバイクだったことだ。70年代のバイクは若干だが現行車に通じるところもあったりして、そこまで古い印象はなかったが、60年代だと流石に古いと感じるところが増える。
   旧型バイクを知るきっかけにもなった。たくさん故障してくれたおかげである。こいつとは北は東京、南は鹿児島まで走った。ありがとう。また会う日まで。近い人に譲ったのでまた会うだろうけど。

2019年2月24日日曜日

Novel in 2019 ⑧ トラペジウム/高山一実

2019.2.24

トラペジウム/高山一実







  今話題の小説だ。帯文に中村文則さんの紹介があったことや、雑誌ダ・ヴィンチで作者本人がこの小説の成り行きなどを説明しており、少し心惹かれるものがあったので読んでみることにした。
 ストーリーは主人公東ゆうの目線で進められてゆく。アイドルになるために様々な策を講じ、四方八方へ奔走する主人公だが、理想と現実の差に時折落胆する。高校生特有の根拠のない自信が自由に描かれていて微笑ましくなる。己のエゴを通し、仲間を悲しませるところも青春を感じる。目標を持って行動することは、今でこそ必要性を感じているが、子供のうちから明確にすることは確固たる強い意志がないとできない。主人公のようにあの黒髪のアイドルのようになりたいんだ!と順序だてて行動する人と、のうのうと過ごし週末はただブラブラと遊んでいた人の違いはなんだろうか。考えても明確な答えは出ないが、どれだけその時に自分の人生と真剣に向き合ったかどうかかもしれない。もちろん大人のように理屈からではなく、感情から生まれる行動だとは思うが。
 幼少期から高校生頃までに抱く目標と、社会人となりそれなりの人生経験を積んでからの目標は、同じ目標ではあるが、達成できる速さが異なると思う。経験は積んでいいこともあれば、同時に重荷にもなる。頭にリスクヘッジがよぎるのだ。そして当の本人はリスクヘッジだというが、それはただのやらない言い訳ともいえる。だから近道のいばらの道を通らず、安全だが遠回りの舗装路を選ぶ。ただこの遠回りには体力がいる。並の遠回りではない。大器晩成だなんてカッコつけて言えるのは、目標地点に辿り着き、なおも走り続ける体力が残ってる人だけだろう。
 この小説は作者の体験が織り込まれていて、強い意志が感じられた。自分の場合はどうだろう、遠回り道の中間地点くらいにはいるのだろうか。その答えがわかるまでは自分を諦めないようにしたい。

 

2019年2月17日日曜日

Novel in 2019 ⑦ その先の道に消える/中村文則

2019.2.17

その先の道に消える/中村文則










 ある緊縛師の話である。中村さんは人の様々な心理状態から生まれる些細な行動をいつも上手く表現している。例えば物語の中で、会計中に財布の中に必要な小銭がすぐ見つかっても少し探すふりをしてから小銭を渡した、という場面がある。こうした小さな奇行は日々自分の心理と向き合い、細かな観察をしてるこそ描けるのではないかと思う。こういった描写が物語の中で幾重にも重なり、緊迫感や緊張感を与えていると思う。
    もうひとつ印象に残ったフレーズがある。人が何かミスをするのはただの不注意と思われるが、実は無意識の中の願望がそうさせたという描写だ。仕事中のミスにより、様々な問題が発生するが、時たまこれを間違えたらこの先の結果はどちらへ転んでいくのだろうか、という興味が湧くことがある。例えばジェンガというゲームは木片が重なりあってできた塔をいかに崩れないように木片を抜いていけるかを争うわけだが、時に思いっきり破壊したくもなるのはそういう心理からだろうか。社会性や秩序を重んじるのは生きてゆく中で必要なことだが、やはり煩悩だらけの人間、たまにはが息抜きが必要となる。実社会ではそれが犯罪という形で為され、人生が終わりかけることもあるが、小説というフィクションの中ならそれが可能だ。
   人間の様々な心理状態から転じて起きる行動をよく観察すること。この作者からはいつも色々なことを学ぶ。

get a life again

  

2年前から動かなくなっていたメグロSG。走ってる途中いきなりクランクの方からカラカラ音がしたので、恐らくそういうことだ。スペアのエンジンがあったので、そのままスワップすることにした。

キャブの面研、右クランクケースのガスケット作製、タペット調整など色々してやっとこさ火入れの準備が完了。しかし火が飛ばない。プラグから始まり、プラグキャップ、プラグコード、イグニッションコイル、フィールドコイル、ポイント、コンデンサーなどをチェックしても飛ばない。Why…その日は解決せず、次の日徹底見直ししてたら火が飛んだ。恐らくポイントの面上がまだ荒れてたのか、もう一度綺麗にペーパーがけしたのが良かったのかもしれない。それにしても苦労した後のエンジン始動は何度やってもたまらない。素直に嬉しい。あとはタンク取り付けて細かいとこ詰めて行くだけとなった。楽しみ




2019年2月10日日曜日

Novel in 2019 ⑥ 新釈 走れメロス/森見登美彦

2019.2.10

新釈 走れメロス/森見登美彦


今年3冊目の森見作品。簡単に言うと文学史に名を連ねる小説家5人の作品を作者の新解釈でリメイクしたものだ。あくまで各作品の根幹は継承しつつも、アレンジメントは森見ワールド全開だ。
   この作者が描く世界は基本的に京都が舞台となることが多い。京都が好きな人は物語と共に頭の中で風景を描けるので、その場の臨場感を楽しむことができる。京都へ行く度に思うが、京都は独特な町だ。神社仏閣、町屋、数寄屋造の家屋など、確かな歴史を刻んでおり日本の伝統文化ここにありと言えると思うが、今の暮らしに馴染みのないものが多くて純日本というよりは異世界とも思える。五木寛之氏もある雑誌で「外国に来たような感覚」と話していたので、そういう感覚で町を見回ると確かにそう思える。
    もうひとつ、この作者の特徴と思われるところは現代ではあまり使われない言葉を多用しているところだ。辞書片手に読み進めざるを得ないが、日本語でしか表わせないような絶妙な、痒いところに手が届くとでもいうような表現が多用されている。これは作者が次世代へ素晴らしい日本語表現を伝えたいというメッセージなのではないかと思って読み進めているが、なんともありがたい気持ちになる。
    英語を覚えたり、世界を知ることはグローバル社会の中で確かに必要なことだと思う。だがまず自国の文化、言葉を知るべきだと思う。英語より国語が優先だ。日本の心を知ってこそのグローバルだと思う。日本人は控えめだから心の中だけで思ってる人も多くいると思うが、外国の人と比べると愛国心が見えにくい。右寄りの発言は何かしらの信者と思われる傾向が表現の自由を奪っているかもことも一因かもしれないが。でも世界各国から日本に興味を持ち訪ねて来る人に日本の素晴らしさを答えられないのは少し恥ずかしい。世界情報共有により様々な価値観が画一化されつつある今の地球上で、もう一度自国を見直し、独自の色を捉える必要がある。

2019年2月4日月曜日

Novel in 2019 ⑤ 夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦

2019.2.4

夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦



  会社の後輩から拝借した今年2冊目となる森見登美彦さんの作品である。世間ではアニメ化して話題を呼んだらしいが、僕には初見の本であった。
   まず作品名に惹かれるものがある。語呂がいい。自由律俳句のようなリズムがあり、入口から期待が膨らむ。主人公の黒髮の少女は天真爛漫で一見大人しそうに思えるが、実は行動力のある性根から素直な子だ。誰もが惚れるとはいかないまでも、純粋で己に忠実であり心を動かされる。老若男女誰であろうと、人が一心不乱に何かに取り組む姿は美しい。キラキラと光輝く高貴なものを見ているような感覚になる。暗礁に乗り上げ、己の意思通り前へ進めない不甲斐なさを感じている時など、そのような光景は心のシミを漂白してくれる。
  そんな黒髮の少女にあっちこっち踊らされる1人の男(勝手に踊っているともいえる)が、この物語のもう一つの軸を担う。彼は己の願いを叶えよう奔走するも、ことあるごとに撃破される青春に充ち満ちた男だ。このような男には情を抱く。
  今思えば駆け引きしている時が1番楽しい時間だったなどというのは、辛うじて所帯を持てた男の自惚れた戯言に過ぎないが、学生時代というのは実にいい時間だったと改めて思う。ここまで自由に己を試せる時間は、一旦仕事を始めてしまうとなかなか持てるものではない。時間を作る努力をするか、何かを失うリスクを背負えば決して難しいことではないが。
   未来をナイスに闊歩するためには、とにかく今を諦めないことだ。「不撓不屈」これは我が座右の銘だが、この小説にも「虚仮(コケ)の一念、岩をも通す」という泥臭い一文が登場する。これは未熟な人でも一途に努めればやがては成就するという意味を成す。
   物語は黒髮の少女と男の未来が動き出す時に終焉を迎える。この男には勇気づけられた。僕も愚かなりに泥臭く明るい未来のために日々の妄想に努め、一歩ずつ歩みを進めて行きたい。