2020年4月27日月曜日

Novel in 2020 No.6 二つの祖国/山崎豊子

2020.4.27

二つの祖国/山崎豊子











 
 

 
 読み終えるの1ヶ月半も費やした。長い間ゆっくり読み進めてたからか、登場人物へ抱く親しみがいつもの小説とは異なってる。ただその親しみの意味は、悲しみの感情移入でしかない。
 今まで太平洋戦争について勉強してきて、様々な悲しい側面があることを知った。本小説はアメリカ国籍を持つ日系2世たちが被った、逃れることのできなかった悲劇な物語であり、新たに知るこの戦争の一面だった。戦争は同じ人間が敵と味方に別れて闘い、敵と味方の区別は国籍に、すなわち人種に寄って分けられるものだが、本小説では、そのどちらの国籍にも属し、またはどちらとも選び難い現実に直面した、そんな人間たちにフォーカスしている。
 しばしば太平洋戦争の始まりは真珠湾攻撃と言われる。アメリカ人たちは ”Remember Pearl Harbor"と声を揃え、日本の奇襲攻撃だと厭み嫌う。表面的な事実だけを見ると日本が悪のように思えるが、これがアメリカが戦争を起こす大義名分のためにアメリカから仕向けられたことだとしたら、被害の少ないハワイ島という本島から離れた場所で、攻撃を受けたとしても最小限の被害で済む場所へ誘導されてたとしたら、開戦責任は全て日本にあるという事実は素直に受け取れなくなる。とても戦勝国のアメリカが使う正義という言葉は素直に受け取ることができない。自分たちの行為は全て棚に上げているのだから。確かに当時の日本の軍国主義は異常で、開戦前から終戦までを指揮した軍部及び内閣は国民に対して負う責任は計り知れない。ただ、戦争の責任はほとんど日本が負うべきだとする極東裁判は納得できないところだ。そんなことは僕がいうまでもなく、当時の見識者がすでに唱えている通りで、この裁判は復讐のショーでしかなかったのだろう。
 この本を紹介してくれた親友とも論議をした。日本がもし戦争に勝っていたらそれも不安な未来しか見えず、当時の体制はいずれ打ち砕かれるべきだったと彼女は話す。現在アメリカはニューヨークで暮らす彼女は、日本とアメリカの間に起きてきた幾多の問題について、実体験を持って幅広く俯瞰した意見をぶつけてくれるから頼もしい。
 終戦時に産まれた子さえすでに75歳、実体験した人ももう一握りしかいない。自分の祖父から聞いた言葉も含め、戦争が教えてくれた大切な教訓を次世代に伝えていかないといけない。