2022.6.25
小学4年生の慎一は母の純江、祖父の昭三と3人で暮らしている。慎一は父親を病気で亡くしたことで影を背負い、引っ越して来た小学校では同級生と馴染めずにいた。同じく引っ越して来た春也とは境遇が似ていることから、少しずつ仲良くなるが、、そんなところから物語は始まる。
道尾さん、面白い。装丁の印象通り、闇夜をもがき苦しむような話だが、脳にストンと落ちる比喩表現、言葉の羅列、ほどよく心を揺さぶるサスペンス色もすべてが心地よい。他作も読んでみたい。
小学生の時は何を考えて過ごしていたのか振り返ってみる。その時々の細かな感情の変化までは覚えていないが、断片的には覚えていることがある。それは総じて何か自分にとって不快な行為を被った場面である。
小学5年生の時、自転車に乗ったヤンキー風な2人組が下校中の僕にぶつかってこようとしてきた。スッと避けたら、アブねーな!と、一言罵声を浴びせて通り過ぎていった。その時僕はかなりビビっていたが、今考える小学生相手に肩をいからせ、まして声を張り上げるなんて。挑発行為をしていたなら叱られて当然とは思うが、あの時は普通に歩いていただけだったような・・・。あいまいな記憶は自分本位に傾く向きがあるので、今考えても真実はわからないが印象的なできごとであった。
こうしてずっと覚えているのは多少なりとも憎しみがあるのであろう。「憎むことでいつまでもあいつに縛られないで」というみゆきさんの歌詞が僕を解放へ導こう試みるが、なかなか頑なな記憶で参ってしまう。