自分の心に浮かび上がる感情を言葉で表現すると、少し違うなという時がある。おおまかには合ってるんだけどほんの少しの違和感というやつ。他国の言語を極めていないので何とも言えないが、日本語の表現は緻密を極めてるのではないか。迷う一方、至極の表現というのも生まれる。開高翁は日本語の表現者の中でもそのトップ集団の一人であろう。(これまた日本語の表現者を極めてないので、今まで触れた中ではという前提にて)
今まで読んできた小説の中にも唸るような表現はたくさんあった。ただ、ほぼ全ページに絶え間なく、弾の切れない機銃掃射のような表現をし続ける小説はそうは無い。開高翁は上梓後に燃え尽きると聞こえているが、これは無理もないだろう。ペース配分を考えたフルマラソンではなく、100m走の速さで走り続けたフルマラソンのような文脈である。あゝカッコいい。