2023年2月27日月曜日

Book in 2023 No.8 (57) すべて真夜中の恋人たち/川上未映子

 2023.2.26

本書がアメリカの文学賞にノミネートされたとのことで読み返してみた。読んだのは数年前だから内容を覚えておらず、初めて読んだような印象であった。恋愛の話ではあるが、シンプルで派手さの無い文体が良いリズムを生み出していて、終始心地が良かった。文豪の文体は明晰さに欠けているため—というよりは理解力が無いため—読み解くのに苦労するが、この作者はサクサクと読ませる。前述した心地良さもあいまって、最後まで読みたい気持ちを持たせてくれる。良い時間だった。


2023年2月19日日曜日

Book in 2023 No.7 (56) 開高健のパリ/開高健

2023.2.19

 パリ渡航の前後で、開高氏のパリに対する見解に変化があることが、本編に入る前の角田氏の解説のおかげでよくわかる。海外の情報が簡単に手に入らない時の海外に対する憧れは、現代とは比にならないだろう。そして実際に足を踏み入れた時の感動は計り知れないものなのだろう。今は知り過ぎてしまう時代だから、さまざまなことに対しての感動が減ってるかもしれない。




2023年2月18日土曜日

Book in 2023 No.6 (55) ストロベリーライフ/荻原浩

 2023.2.18


 恵介はグラフィックデザイナーとして独立した。当初たくさん舞い込んでいた仕事も次第に減ってくる。そんな折、実家の親父が倒れ帰郷することとなる。2年もの間実家に寄り付かなかったのは、実家の家業でもある農業を継いでほしい父親との、小さな確執があったためである。多少の気詰まりを覚えつつ実家に帰り、親父が普段野菜を育てているハウスを覗いてみると、思いもよらないもの「苺」が育てられていた。そんな話。

 この小説の文体は自分の好みではない点がいくつかあった。羅列してみる。
・ウケを狙う描写
・しつこい描写
・カッコ書きによる心情の説明
これらすべて映像前提の脚本であれば楽しいシーンになると思うが、文字として読み進めていくには少し疲れてくる。
 ただ、農業に関する話の内容自体は面白く、とても興味が湧いた。うちはじいちゃんが専業農家だったから今でも田畑がある。今は親父が野菜を育て、家で食べるには十分な量をいつも分けてくれるので、とても助かっている。が、現実的に将来どうすべきかということは考えていかなくてはならない。今の日本には兼業農家が多いということも、少し農業に前向きになる情報であった。
 自分の仕事で人が喜んでくれる。その喜びを直接目の前で伝えてくれる。これは本当に幸せなことで、やりがいに繋がるんだろうな。人生は短い。







2023年2月12日日曜日

Book in 2023 No.5 (54) 若きヱルテルの悩み/ゲーテ

2023.2.12

 青春は周りの目も気にせず奔走する力を与えてくれるが、桎梏が容赦なく襲いかかり、悩乱の時期でもある。旧友はハタチの時にヱルテルと同じく自らの命を絶った。悲劇でしかなかったが、彼はとても好人物であったからその行動に敬意は示したい。今彼に言いたいことは、ハタチの時の苦悩はその入り口に過ぎず、そしてそもそも人生とはそういうもので苦しみ喚き生きていくしかないと。でもそれを乗り越える楽しみがあり、傍には共に駆ける同志も必ずいると。