2022.8.26
角田光代さん曰く、小説を書き重ねてゆくことで自分の文章を確立させていく作家と処女作から自分だけの文章を持っている作家がいるらしい。この作品は完全に後者にあたる。
あらゆる作家の処女作って気になるものだが、村上氏のこれをずっと読んでいなかった。ドラッグと性に走る若者を描いた作品で、氏はこれを二十代で描いている。もう信じられない。初めてコインロッカー・ベイビーズを読んだ時も相当な衝撃だったが、一作目からのこの人の文章は爆発していたわけだ。小説は作家の想像や妄想を文章に落とし込むわけだが、この人のそれは常軌を逸している。ヨーロッパにてトランスやエレクトロを手掛ける人たちは、自らがハイになることでジャンキーのツボを刺激する音を求めているわけだが、氏もドラッグしながら執筆してたんじゃないかと思うくらい描写が鋭い。