2023年2月12日日曜日

Book in 2023 No.5 (54) 若きヱルテルの悩み/ゲーテ

2023.2.12

 青春は周りの目も気にせず奔走する力を与えてくれるが、桎梏が容赦なく襲いかかり、悩乱の時期でもある。旧友はハタチの時にヱルテルと同じく自らの命を絶った。悲劇でしかなかったが、彼はとても好人物であったからその行動に敬意は示したい。今彼に言いたいことは、ハタチの時の苦悩はその入り口に過ぎず、そしてそもそも人生とはそういうもので苦しみ喚き生きていくしかないと。でもそれを乗り越える楽しみがあり、傍には共に駆ける同志も必ずいると。

 

2023年1月30日月曜日

Book in 2023 No.4 (53) 満願/米澤穂信

 2023.1.29  

6つの短編から成り立つ作品集。登場人物の生い立ちや背景の複雑さが文章に深みを与える点と、文の構成の緻密さにいつも引き込まれてしまう。どのように筆を進めているかわからないけれど、完璧な図面の元に成り立っているように思える。日常生活にあるようでないような、その境界線を行き来するようなところがいい。


2023年1月24日火曜日

Book in 2023 No.3 (52) タスキメシ/額賀澪

 2023.1.20

ご飯とマラソンの話。ここ数年はランニングをしていることや、箱根駅伝も見るようになったので、色々思うところがある。ひたすら目標に向かって走る人たちは見ていて清々しく、歳のせいか涙腺が緩むことも増えてきた。
 「生涯青春」とは、バイク好きのじいちゃんたちを見ていた時にふと思いついた言葉なのだが、夢中になれることがあるって尊いことだ。自分の好きに邁進していこう。


2023年1月15日日曜日

Book in 2023 No.2 (51) 狐/永井荷風

 2023.1.15

 じいちゃんの家にずっと置いてあった「日本文學全集」から永井荷風の「狐」を読んだ。この本は初めて開いたのだが、本にはページを捲った形跡がなく、初めて酸素に触れたような顔をしてる。これ絶対じいちゃん読んでないわ。
 実体験か否かわからぬが、著者の幼少期に起きた狐にまつわる話だ。この時代の文学ではたいてい親父が子供もにカミナリを落としている。特に複雑な話でもなく、読み終えてしまった。この著者が文豪に名を連ねる由縁は。また次回作に持ち越し。


2023年1月14日土曜日

Book in 2023 No.1 (50) ある男/平野啓一郎

2023.1.14
2023年1冊目は、現在映画公開中の「ある男」で始まった。
 映画が公開された後に原作を読むというのは、何となく意に沿わないことだったはずだが、素直に読んでみた。
 この本が人を惹きつけるの点を自分なりに考えてみると、登場人物それぞれの出自の複雑さと、それが本の世界だけではなく現実ともリンクしていることにあると思う。さまざまな要素を収斂させる平野氏の感性には感服する。やっぱ視点がいいな。独特な視点が。言語化しにくいことを言語化してくれて、読みながら「ありがたいなー」なんて思ったりしてる。次回作も楽しみ。

2022年12月28日水曜日

Book in 2022 No.19 抱く女/桐野夏生

 2022.12.27

 いつの時代にも「俺はこんな時代に生まれたばっかりに、、」「私たちは不幸な時代に生まれた、、」と嘆いている人はいるのだろう。2022年現在、我々は原因不明の病原体に脅かされ、戦争により刻々と命が失われるのをリアルタイムに知り、燃料や原材料の高騰の煽りを受け、日々の暮らしにあまり光を見出せないでいる、ように思える。今の時代は不幸なのだろうか。状況や人により答えは異なるだろうが、相対的に見れば僕は少なくとも幸せだと思えている。学生同士が互いの主張の違いから、殺し合いに発展する時代と比べたら尚更だ。
 人生は基本的には闇と思うべきだ。これはネガティブ思考ではなく、それを基準にすることで日々の小さな光を見つけられるようにするポジティブ思考に他ならない。明日の天気は晴れのようだ。
 





2022年11月17日木曜日

Book in 2022 No.18 夏の闇/開高健

 

 自分の心に浮かび上がる感情を言葉で表現すると、少し違うなという時がある。おおまかには合ってるんだけどほんの少しの違和感というやつ。他国の言語を極めていないので何とも言えないが、日本語の表現は緻密を極めてるのではないか。迷う一方、至極の表現というのも生まれる。開高翁は日本語の表現者の中でもそのトップ集団の一人であろう。(これまた日本語の表現者を極めてないので、今まで触れた中ではという前提にて)
 今まで読んできた小説の中にも唸るような表現はたくさんあった。ただ、ほぼ全ページに絶え間なく、弾の切れない機銃掃射のような表現をし続ける小説はそうは無い。開高翁は上梓後に燃え尽きると聞こえているが、これは無理もないだろう。ペース配分を考えたフルマラソンではなく、100m走の速さで走り続けたフルマラソンのような文脈である。あゝカッコいい。