今はどう生きるかが問われるが、ひと昔前はまず生きることが求められた。高度経済成長以前の話になるが、この時代のシンプルな生き方は憧れであり、情報化社会に疲れた自分自身の心の拠り所でもある。戦前、戦中、戦後、日本人が飢えや貧しさに苦しみ、それでも踏ん張り支えてきてくれたことは知っている。その時代の人々の心を理解したいと努めても、経験していない僕は知れない。想像を遥かに超える辛さがあったのは間違いない。でも当時の各文献から読み取れるのは、心を輝かせ絶対負けないぞという人々の心意気ばかりなのだ。これだけ恵まれた世界にいる今の日本人は絶望に瀕しているというのに。
もうあの頃には戻れない。それは誰もがわかってる。でもあの頃の生き方がもっと光を浴びて、今の時代に反映していってくれたら嬉しい。「戦争とおはぎとグリンピース」。この本を出した人はそういった思いが人一倍あるのであろう、刊行してくれたことに感謝しかない。歴史を知ることは絶対無駄じゃない。僕にとっての処世術はそこにあったから。もし日常に絶望している若者がいるとする。彼らに、ご飯が食べられるだけでもすごく幸せなことなんだよ、と言ってもほとんど何も響かないだろう。今と戦中、当たり前の基準が違いすぎるから当然のことだ。でも彼ら自身がやがて自ら過去に赴き、当時の生き方を自分に照らし合わすことができたらきっと心に響くことがあるはずだ。
もうすぐ終戦の日、ご飯を噛み締められることに今一度感謝して、また明日を生きてゆきたい。
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