2022.6.7
大阪市内、現在の大阪城公園はかつての大阪陸軍造兵廠であった。当時は日本最大、つまりアジア最大の兵器製造の拠点でもあった。戦後、敷地や兵器の一部はアメリカ軍に接収されたが、1952年のサンフランシスコ講和条約締結以降も、この莫大な鉄の砂漠は残り続けた。鉄や銅など様々な鉱物を原料とした武器が眠っていたため、杉山鉱山とも呼ばれていたらしい。「日本三文オペラ」はそれら鉱物を夜な夜な敷地に忍び込んでは強奪していた集団、別名”アパッチ族”をテーマにした小説である。
開高健の小説は内容の濃さからか、いつも読むのに時間がかかってしまう。ただ、幾日も頭に叩き込むゆえ、内容をよく覚えている。彼もアパッチ族だったのではないかというくらいの、観察力やリアルな描写に舌を巻く。これが想像の範疇なら恐ろしいものである。ドロドロした血生臭い、臓物のような話なのだが、著者の粋で放埒な言葉センスで爽快な気分になる。眼前で繰り広げられるアパッチ族の狂喜乱舞、ベトナムでの戦闘前線取材、アマゾンでの釣行、語彙力や想像力や生命力を掻き立てるのはこの刺戟なんだな。
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