2019.2.17
ある緊縛師の話である。中村さんは人の様々な心理状態から生まれる些細な行動をいつも上手く表現している。例えば物語の中で、会計中に財布の中に必要な小銭がすぐ見つかっても少し探すふりをしてから小銭を渡した、という場面がある。こうした小さな奇行は日々自分の心理と向き合い、細かな観察をしてるこそ描けるのではないかと思う。こういった描写が物語の中で幾重にも重なり、緊迫感や緊張感を与えていると思う。
もうひとつ印象に残ったフレーズがある。人が何かミスをするのはただの不注意と思われるが、実は無意識の中の願望がそうさせたという描写だ。仕事中のミスにより、様々な問題が発生するが、時たまこれを間違えたらこの先の結果はどちらへ転んでいくのだろうか、という興味が湧くことがある。例えばジェンガというゲームは木片が重なりあってできた塔をいかに崩れないように木片を抜いていけるかを争うわけだが、時に思いっきり破壊したくもなるのはそういう心理からだろうか。社会性や秩序を重んじるのは生きてゆく中で必要なことだが、やはり煩悩だらけの人間、たまにはが息抜きが必要となる。実社会ではそれが犯罪という形で為され、人生が終わりかけることもあるが、小説というフィクションの中ならそれが可能だ。
人間の様々な心理状態から転じて起きる行動をよく観察すること。この作者からはいつも色々なことを学ぶ。
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