トラペジウム/高山一実
今話題の小説だ。帯文に中村文則さんの紹介があったことや、雑誌ダ・ヴィンチで作者本人がこの小説の成り行きなどを説明しており、少し心惹かれるものがあったので読んでみることにした。
ストーリーは主人公東ゆうの目線で進められてゆく。アイドルになるために様々な策を講じ、四方八方へ奔走する主人公だが、理想と現実の差に時折落胆する。高校生特有の根拠のない自信が自由に描かれていて微笑ましくなる。己のエゴを通し、仲間を悲しませるところも青春を感じる。目標を持って行動することは、今でこそ必要性を感じているが、子供のうちから明確にすることは確固たる強い意志がないとできない。主人公のようにあの黒髪のアイドルのようになりたいんだ!と順序だてて行動する人と、のうのうと過ごし週末はただブラブラと遊んでいた人の違いはなんだろうか。考えても明確な答えは出ないが、どれだけその時に自分の人生と真剣に向き合ったかどうかかもしれない。もちろん大人のように理屈からではなく、感情から生まれる行動だとは思うが。
幼少期から高校生頃までに抱く目標と、社会人となりそれなりの人生経験を積んでからの目標は、同じ目標ではあるが、達成できる速さが異なると思う。経験は積んでいいこともあれば、同時に重荷にもなる。頭にリスクヘッジがよぎるのだ。そして当の本人はリスクヘッジだというが、それはただのやらない言い訳ともいえる。だから近道のいばらの道を通らず、安全だが遠回りの舗装路を選ぶ。ただこの遠回りには体力がいる。並の遠回りではない。大器晩成だなんてカッコつけて言えるのは、目標地点に辿り着き、なおも走り続ける体力が残ってる人だけだろう。
この小説は作者の体験が織り込まれていて、強い意志が感じられた。自分の場合はどうだろう、遠回り道の中間地点くらいにはいるのだろうか。その答えがわかるまでは自分を諦めないようにしたい。
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