2019年7月21日日曜日

Novel in 2019 No.21 K2 復活のソロ/笹本稜平

2019.7.21

K2 復活のソロ/笹本稜平

   








 人間に与えられた冒険という素晴らしき行為に深く感銘を受けた。冒険というのは、やれるやれないではなく、やるかやらないかである。何事もやらないとわからないから面白い。人生というものが無意味なものとすれば、そこに意味を付けるのは人間の勝手な行為である。周りの人間からしたら戦争でも山行でも生きて還ることが重要なことだと思うが、仮に当人が命を落としても、自身がそれで人生を全うしたと感じているなら、それを否定してはいけない。生き切ったという意味では賞賛すべきだとも思う。いい本でした。

2019年7月7日日曜日

Novel in 2019 No.20 ハコブネ/村田沙耶香

2019.7.6

ハコブネ/村田沙耶香



  











 
 3人の女性が思いをぶつけ合う。ただ、みな個々に独特の感性を持つため、気持ちに寄り添い合うようなことはなく、小言を言われながらもそれぞれの道を進む。この小説はノンフィクションなので、現実と照らし合わして本の感想を述べるのはナンセンスかもしれないが、登場人物の言動はみな一様に「こんな人いないだろう」と思わせる。現実とかけ離れた小説の設定なんていくらでもあるのだが、この小説の場合そんな感想が出てくる。なんだろうか、文章の羅列が人物の独りよがりなのか、作者の独りよがりのようにも見えてくる。小説は小説家が放つ表現方法と捉えるなら、その意図を捉えることが今の僕にはできなかった。

2019年6月23日日曜日

Novel in 2019 No.19 宝島/真藤順丈

2019.6.23


宝島/真藤順丈


    熱くなった。感動で、そして怒りでも。戦後の沖縄でこのようなことが起きていたとは知らなかった。己の無知を恥じる。

  小説ってこういうものなんだ。音楽もアートも一緒。それを見ても聞いても世の中が変わることはないが、これを見て聞いて動く人が現れたら世界がかわっていく。人のケツを蹴って動かす。これが芸術なんだ。ある面のアメリカは大好きなのだが、政治に関わる部分は本当に嫌いだ。世界で1番、世界の平和を乱してる国だ。太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、そして今度はイランか。どこにでも首を突っ込み、ヒロイズムに酔いしれる。イランに望むことは核を持たないことだと。再三言われてるが、なぜ、本当にどの口が言ってんだ。自分たちは世界で唯一核で人々を虐殺し、一生消えることの無い傷を心、体、目に刻み込んだ。戦争を終わらす為だという大義名分を元に行った腐った行為。終わらすためだけなら、なぜ広島にウラン爆弾、長崎にプルトニウム爆弾を落とした。ただの実験に使いやがって、大切な命を。今でもアメリカのヒロイズムに陶酔したベテランはあれは仕方ない行為だったという。

    こんな乱文並べても、今でも基地は沖縄にある。安倍晋三は戦後74年経っても伝統に倣い、アメリカの飼い犬として忠実だ。沖縄では普天間の答えが出てるのに。確かに基地ありきの生活を送る人もいる。でもこれ以上広げなくてもいいだろう。。もう沖縄の人をこれ以上悲しませないでほしい。

2019年6月16日日曜日

Not novel but reading in 2019 No.18 モンベル7つの決断/辰野勇

2019.6.16



  夏山フェスタで現モンベル会長である辰野勇氏の講演を聞いた。会員紙のOutwardで氏の文章を読んでいて、ユーモアがあり俯瞰で物事を捉えることができ、情熱をありったけ備えている人なんだろうなと感じていたが、その通りだった。講演後、氏が上梓した本を購入。ちゃっかりサインも貰った。少し会話をしたがビビリな僕はそれ以上踏み込めなかった。いつか対談できるような領域に行けたらいいな。
  本の中身は価値がある言葉ばかりだったけど、特に印象に残ったものをひとつ。3人のレンガ積みの話だ。1人目に何をしているのですかと聞いたら「レンガを積んでるんだ」と答えた。2人目は「レンガを積んで壁を作ってるんだ」と答えた。3人目は「レンガを積んで、壁を作り、それがやがて大聖堂になる。子供が大きくなったとき、この教会のレンガは私が積んだのだと教えて、見せてやるのが楽しみです」と答えた。やれと言われたことをただやる人、やる行為に目的と意義を明確に持つ人の違いである。辰野さんは会社の社長、つまりリーダーとして引っ張って行く立場だ。社員に事業の意味と目的を明確に示すことで、その意義を感じてもらうことができる。
  読み終わってまず山に行きたいと思った。人生を生き抜く処世術を辰野さんは山で得た。何からそれを得るかは人それぞれだろう。自分は何だろう。うーん、まだまだ旅は終わらない。



2019年6月9日日曜日

Novel in 2019 No.17 T型フォード殺人事件/広瀬正

2019.6.9

T型フォード殺人事件/広瀬正


  











 
 ここ最近の土日はツーリングや歌フェスなどが重なり、本を読む時間を造れなかった。久しぶりの小説でタイムトラベル。いい時間だ。以前読んだこの著者の作品、マイナス・ゼロのような直接的なタイムトラベルは無いが過去と現在の場面を行き来するところ、手法は似ている。残念ながら、僕自身は昭和を愛してると思ってはいるが、じゃあその時代について語ってくれと言われると、その時代を生きた人にはどうしても敵わない。僕が持つのは本や雑誌から得た知識のみ。実際に昭和を生き抜いた人はその景色、車、オートバイ、音楽、風俗や人々の息遣いなど、立体感と臨場感を持って語れる。どうしようもないことなのだが、やはりジェラシーだ。明治、大正、昭和生まれの人は言うまでもなく、日々現世へさよならを告げている。もっと色々な人と話をして、あらゆる分野の知識を吸収したいし、もっと新しい世界を見せてほしい。
   巻末の解説に記してあったが、著者は単なる小説家ではなかったようだ。ジャズ演奏者であり、クラシック・カーのモデル製作者と多くの顔を持っていた。この著者の描く緻密で複雑な文章や多角的なストーリー展開などは、彼のひとつに絞らない生き方や思考が影響してると思って間違いないと思う。
    興味があるならまずやってみる。そこまでの行動は早く。考えるのはその後だ。この頃は次から次へ新しい情報が降りかかるから、少しでも淀んでるとすぐに追いつかれ、追い抜かれ、すぐ背中が見えなくなる。捨てるもの、残すもの、パパッと判断していこう。

2019年5月18日土曜日

Novel in 2019 No.16 カゲロボ/木皿泉

2019.5.18

カゲロボ/木皿泉

  














 平穏な日常のリズムがふと崩れる。人生は思ったように進まないなんて誰でもわかっていながらも、いざその状況になればみなが戸惑い、落胆する。じゃあそんなリズムをまた平常に戻すための起爆剤のようなものは何かといわれたら、小説や音楽のようなエンターテイメントなものかもしれない。それ自体が僕らのそれを変えるのではなく、それを読み、聞いてケツを蹴ってもらい僕らが自ら変えていく。改めて感じることだが、日々の仕事はすべて誰かのためになっている。野菜を育てる農家、野菜を買取り店に並べる小売業、新鮮な野菜を調理し空腹を満たす料理人、空腹が満たされたトラック運転手が運ぶ荷物、その荷物を受け取った青年。その荷物の中身は、、。人はみな繋がる。すべてが無駄ではないと思いたい。

2019年5月6日月曜日

Novel in 2019 No.15 ノースライト/横山秀夫

2019. 5. 6


ノースライト/横山秀夫
  














  ノースライト、北の光り、つまり北からの採光の意味合いである。建築物においての北向きといえばアトリエだ。一日中、光の加減が少なく絵を描くのに適していると、以前インテリアを勉強している時に習った覚えがある。
   物語は建築家として光と闇の時代を生きながらえる青瀬を中心に展開していく。そこへ実在する建築家ブルーノ・タウトの視点や回想が絡み合い、物語に馬力が出てくる。建築やイスが好きな人にとっては非常に馴染みやすく、読み進めていくにつれ話の中へごく自然に包み込まれる感覚があるだろう。
    小説とは様々な事象や事柄を結びつけ、ひとつの物語を作り上げるものだが、この作者の手にかかると非常に緻密で継ぎ目のないごく自然な展開を見せる。一本の糸が別の糸と絡み、さらに他の糸と絡み徐々にごちゃごちゃになっていく。もうこんなのほどけないよと諦めかけた時、スーッと糸がほどけスッキリした表情を見せる。それは爽快な気分であり、読み手を満足させる最高の瞬間である。