2019年1月23日水曜日

Novel in 2019 ④ スマホを落としただけなのに/志駕晃

2019. 1. 23


スマホを落としただけなのに/志駕晃


  月並みな話だが、現代はスマホに支配されている。何をするにも側にいるし、これがないと不安でしかたない人もいる。
  今年31歳の僕が携帯電話を持ち始めたのは中学2年生の時で14歳だった。持ち始めた年齢として、現代では遅いかもしれないが、ひと世代前からしたら早いというところだろうか。当時の携帯電話には、電話、メール、それとグローバルとはまだ言えない小さなウェブサイト内を、ゆったりと閲覧する機能くらいしか備わっていなかった気がする。当然役に立っていたし、あれば便利だったが、無くても困るものではなかった。生活の中を占めるウェイトはまだ少なく、あくまで生活の補助役であったと思う。ところが20歳頃、iphoneが初めて日本に伝わり…今に至る。
  読み進めて行くに連れて、まず感じたのは恐怖である。見えないものに対して人は恐怖を抱きにくいと思う。それは実感がないから。ただ見えないものが徐々に近づいてると知れば、それは見える恐怖よりその度合いが増すのではないか。見えないからどう対象していいかわからない。クラッカー、サイバー攻撃など、ネット上でのしかけに対して無能な人は無抵抗にならざるを得ない。作者は癌細胞が人知れず死を手繰り寄せるように、徐々に迫る恐怖を緻密に描写している。専門的な言葉も、理解しやすくする工夫がされているのか、知識が浅はかな僕でも、飛ぶように読むことができた。
  スマホ依存は今や現代病の一つである。図書館へ行く時、携帯電話を車に置いて行くことがよくあるが、ものがないと見ないものだ。(もちろん物理的に見れないのだが)このように警鐘を鳴らしてくれたことは、スマホ依存な人が苦手な僕からしたら感謝したいところだが、もうそれらがない時代に戻ることは無理だろう。いや、それよりまだ誰も知る由も無い、人の存在さえも脅かすテクノロジーが未来には待っていると思う。時代は加速し続けている。


2019年1月20日日曜日

novel in 2019 ③ となり町戦争/三崎亜記

2019. 1. 20

となり町戦争/三崎亜記


表沙汰にはならず水面下のみで進む戦争や、該当国同士ではない代理国間での戦争など、戦争には色々な形態がある。戦争に限らずあらゆる事象は目の前では起こらない限り、または自分の周りへの影響が無い限りは実感が持てないことが多いのではないか。例えば中東での争いで自爆テロにより数十名死亡と報道されても、僕ら一般人は大変だなと思うばかりで実感を持てない。大変なのはわかるが、現実的に何もできない。(行動次第では可能だと思うが僕はできない)
  そのようなもどかしさをこの小説では説明しているのだろうか。少なくとも僕はそう読み取ったが、ストーリーは平たく展開が淡々としており、そろそろ盛り上がりが来るだろうかと思ってる間に話が終わってしまった。実感の無い戦争を謳う前に、このストーリー内容に実感を持てないまま終わってしまった印象である。
    異なる意味でのもどかしさを感じてしまったが、このような読後感を持たせるのが作者の目的なら、僕は素直に嵌ってしまったことになる。

2019年1月13日日曜日

novel in 2019 ② 熱帯/森見登美彦




2019. 1. 13

森見登美彦さん作の「熱帯」

  入院期間を利用して読むことができた。そこは入院に感謝…
  話の概要をダ・ヴィンチで見かけたので読んでみたくなったのだが「どういった小説かは読んでみてもらわないと説明できない」というのがこの小説についての作者からのコメントであった。読み終えて、今こうして文章を走らせているが、作者の言う通り型にはまらない何とも形容し難い小説であった。話の鍵を握るのは「千一夜物語」という実在する物語だ。(小説を読んでいる合間に調べて初めてこの本について知った)読む進めていくと、物語の巧みで奇妙な展開に脳が熱くなってきた。様々な大きさや形の情報が、次々と目の前を通り過ぎて行き、脳内の短期記憶倉庫は整理しきれずごちゃごちゃである。我が読書脳のメモリ不足を痛感した次第だ。これが現実なのか夢なのか、作者の術中に嵌められた感じがするが、小説を読む時の心地良さとしては悪くはない。
   物語自体の本質とはズレるが、京都を愛でる人には嬉しい描写が現れる。東山、南禅寺付近の描写は情景と共にページをめくることができた。京都が呼んでいる。

   入院中の病室で「熱帯」というタイトルの本。時には右腕にセファゾリン点滴を打ち込みながら片手で、時には集団部屋という監獄にも似つかない異空間で人生を散々謳歌した後ここへたどり着いたであろう3人のおじきのいびき・独り言・イヤホンをしながらの笑い声に苛まれつつ読み進めたこの本について作者は「熱帯と本というものはかけ離れている」と、雑誌内でコメントしていた。病室もまた熱帯とは対の場所にいるような気もする。そんな居心地で読み進めた本は、初めての入院ということも重なり、生涯忘れ難い1冊となるだろう。それにしても京都行きたい。
  


2019年1月7日月曜日

beautiful stationery & Art..



hang out with good old friend T to ALASKA BUNGU in Gifu. (mighty stationery shop)

旧友Tと岐阜市のアラスカ文具へ。スタンダードなドイツ製や、あまり見かけないヨーロッパ製の文具など多数取り扱っており、来る度とても楽しくなります。今日は月光荘のヌメ革ペンケースとスケッチブック、Rotringのtikkyシャーペンとボールペン、シャチハタのエルゴラインを購入。ペンケースは経年変化が楽しみ。12月に入ったばかりという店員さんが面白かった。



after that, heading for “Alvar Aalto Second Nature” in Nagoya Art Museum.

その後はフィンランドの巨匠、アルヴァ・アールトの展示会へ。自分の思いを身の回りのものにデザインとして落とし込むことは、生活がより豊かになるんだろうなあ。よりベターな暮らし。




2019年1月5日土曜日

novel in 2019 ① 羊と鋼の森/宮下奈都

2019. 1. 5.

小説家いいな。
そう思わせてくれた宮下奈都さんの

「羊と鋼の森」


自然な言葉と無理をしない比喩表現が心地よく体に入ってきた。非現実的過ぎず、あくまでニュートラルな良さがある。ピアノの一部は羊毛と木でできているのでそれを森と捉え、弦は鋼である。ピアノの調律や演奏の中にまるで自然の中を歩くような心地よさがあるというのは、筆者の実体験が元になっているのであろう。色々な趣味や仕事があるが、原点回帰というか、すべては自然が元にあると常日頃感じてしまう。むしろ母なる自然と言われるように人間の心はぼくらが気づかないところで、自然への回帰をひしひしと促してるのではないかと考える。文明が暮らしのあり方を日々変えてはいるが、主体はあくまで自然なのだろう。