2019.2.4
会社の後輩から拝借した今年2冊目となる森見登美彦さんの作品である。世間ではアニメ化して話題を呼んだらしいが、僕には初見の本であった。
まず作品名に惹かれるものがある。語呂がいい。自由律俳句のようなリズムがあり、入口から期待が膨らむ。主人公の黒髮の少女は天真爛漫で一見大人しそうに思えるが、実は行動力のある性根から素直な子だ。誰もが惚れるとはいかないまでも、純粋で己に忠実であり心を動かされる。老若男女誰であろうと、人が一心不乱に何かに取り組む姿は美しい。キラキラと光輝く高貴なものを見ているような感覚になる。暗礁に乗り上げ、己の意思通り前へ進めない不甲斐なさを感じている時など、そのような光景は心のシミを漂白してくれる。
そんな黒髮の少女にあっちこっち踊らされる1人の男(勝手に踊っているともいえる)が、この物語のもう一つの軸を担う。彼は己の願いを叶えよう奔走するも、ことあるごとに撃破される青春に充ち満ちた男だ。このような男には情を抱く。
今思えば駆け引きしている時が1番楽しい時間だったなどというのは、辛うじて所帯を持てた男の自惚れた戯言に過ぎないが、学生時代というのは実にいい時間だったと改めて思う。ここまで自由に己を試せる時間は、一旦仕事を始めてしまうとなかなか持てるものではない。時間を作る努力をするか、何かを失うリスクを背負えば決して難しいことではないが。
未来をナイスに闊歩するためには、とにかく今を諦めないことだ。「不撓不屈」これは我が座右の銘だが、この小説にも「虚仮(コケ)の一念、岩をも通す」という泥臭い一文が登場する。これは未熟な人でも一途に努めればやがては成就するという意味を成す。
物語は黒髮の少女と男の未来が動き出す時に終焉を迎える。この男には勇気づけられた。僕も愚かなりに泥臭く明るい未来のために日々の妄想に努め、一歩ずつ歩みを進めて行きたい。
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