2022.4.12
作者あとがきに、雪国は日本の外の国で日本人に読まれた時に懐郷の情を一入にそそるらしいと書かれている。なんでか日本の国内にいてもそう思う。幸せな話ではなく、寒さを感じさせる描写ばかりなのだが、温かさを感じる。常に陽に照らされる夏ではなく、ふとした時に感じる冬の陽の温もりのような、さりげなさがある。
芸者とか花街にまつわる表現ってのは、個人的に文章に華を感じる。江戸から昭和にかけての情緒的な香りがするし、背徳的なところにもハラハラするからかもしれない。殊更、駒子が三味線を弾き始める描写はもう文章芸術といっていい。言葉でそこまでの艶かしさを出せるってのは恐怖すら感じる。これぞ川端康成、緻密な観察力がものをいうんだろう。日々目にする光景を目に焼き付けて、言葉にして表現することが大事なのだろう。
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